「飛行機の重量って?」
「飛行機の重心位置はどうやって計算するの?」
「出発前の確認事項の重心位置等について知りたい!」
このような疑問を、お持ちではないですか。
この記事では飛行機の重量・重心位置について、以下の事項について解説していきます。
- 飛行機の重量確認の法的根拠
- 飛行機の重量の種類・重心位置について
- 機長の出発前の確認事項の【重心位置等】について
この記事を読めば、機長の出発前の確認事項の【離陸重量・着陸重量・重心位置および重量分布】!【飛行機の重量】について理解できるでしょう。
ぜひ、最後までご覧ください。
飛行機の重量確認の法的根拠
飛行機が飛ぶにあたって、重量確認はとても重要です。
【機長の出発前の確認事項】にも、飛行機の重量・重心位置について確認することが定められています。
【機長の出発前の確認事項】では、航空法 第73条の2・航空法施行規則164条の15で飛行機の重量・重心位置の確認が定められているのです。
第164条の15 法第73条の2の規定により機長が確認しなければならない事項は、次に掲げるものとする。 一 当該航空機及びこれに装備すべきものの整備状況 二 離陸重量、着陸重量、重心位置及び重量分布 三 法第99条第1項の規定により国土交通大臣が提供する情報(以下「航空情報」という。) 四 当該航行に必要な気象情報 五 燃料及び滑油の搭載量並びにそれらの品質(燃料の品質にあつては、当該航空機がピストン発動機又はタービン発動機を装備している場合に限る。) 六 積載物の安全性 2 機長は、前項第1号に掲げる事項を確認する場合において、航空日誌その他の整備に関する記録の点検、航空機の外部点検及び発動機の地上試運転その他航空機の作動点検を行わなければならない。 |
車関係の道路法では重量のみの制限がありますが、飛行機については【重量】及び【重心位置】の確認もとても重要になるのです。
飛行機の重量の種類・重心位置について
飛行機の重量の種類は、1つだけではありません。
飛行機の性能等により色々な重量制限の種類があり、飛行機の型式ごとにも重量制限があります。
飛行機の重量・重心位置は、飛行機の性能と密接な関係があるのです。
飛行機の重量の種類
飛行機の重量制限の種類には、8つほどあります。
飛行機が飛ぶ場合には、以下の飛行機の重量制限の全てに満足しなければなりません。
・飛行機の構造上の重量 ・滑走路の長さによる重量 ・上昇率の制限による重量 ・障害物をクリアーするための重量 ・飛行中に1つのエンジンが故障した場合でも障害物をクリアーできる重量 ・着陸時の制限重量 ・翼の付け根にかかかる力の制限重量 ・タイヤの強度による制限重量 |
それではそれぞれの重量制限について、詳しく解説していきます。
【飛行機の重量制限】の種類 | 解説 |
飛行機の構造上の重量 【Structural Limit】 | 飛行機の取扱説明書でもある「飛行規程」の制限事項に記載されている構造上の重量です。 |
滑走路の長さによる重量 【Field Limit】 | 飛行機の重量が重いほど、離陸するまでの滑走距離が長くなります。 また離陸するまでの滑走距離が長くなる原因として、温度・標高・風・滑走路状態等も影響するのです。 滑走路の長さにより、飛行機の重量を調整しなければならない場合があります。 |
上昇率の制限による重量 【Climb Limit】 | 離陸後にさだめられた上昇率を確保するための重量です。 |
障害物をクリアーするための重量 【Obstacle Limit】 | 離陸経路に建物や山などの障害物がある場合には、障害物を超えて飛行できるように定めた制限です。 |
飛行中に1つのエンジンが故障した場合でも障害物をクリアーできる重量 【Enroute Limit】 | 2つのエンジンを装備している飛行機は、1つのエンジンが故障すると飛行機の性能が大きく下がります。 山岳地帯などを飛行中に1つのエンジンが故障した場合でも、残り1つのエンジンで飛行経路上の障害物を回避して飛行できることが求められます。 |
着陸時の制限重量 【Landing Limit】 | 飛行機の着陸時には最大着陸重量が定められており、基本的にこの重量以下でないと着陸できません。 燃料をたくさん搭載した国際線の旅客機が離陸後すぐに着陸しなければならなくなった場合には、重量を減らすために空中で燃料を投棄する場合もあるのです。 この重量も飛行機の説明書「飛行規程」の制限事項に、記載されています。 |
翼の付け根にかかかる力の重量制限 【Zero Fuel Limit】 | 飛行機が飛ぶのは、翼が上向きに揚力を発生させているからです。 このとき、翼の付け根には負担がかかっています。 一方翼の中には燃料が入っているので、上向きの揚力と反対方向に重力として働き、翼付け根の負担が減っています。 しかし飛行するにしたがって燃料が減っていき、翼の付けに負担がかかっていくわけです。 |
タイヤの強度による重量制限 【Tire Energy Limit】 | タイヤには飛行機の重量が全てかかり、また飛行機が停止する場合にはブレーキがかかるのでタイヤはさらに過酷な状態になります。 |
飛行機が出発するには、全ての重量制限に満足しなければならないのです。
飛行機の重量の重心位置
飛行機の重量は重量制限だけではなく重心位置、つまり【バランス】が重要になります。
飛行機は重心位置【バランス】が前方にあるのか、後方にあるのかで安定性・操縦性が異なってきます。
飛行機の重心位置は翼付近にあり、許容重心位置範囲(この範囲内に重心位置があれば、飛行可能)も狭いので飛行機への搭載物はバランスを考えて搭載する必要があるのです。
飛行機に搭載するものとしては、搭乗客・燃料・貨物などがあります。
飛行機の燃料は翼の中に搭載するので、残りの「搭乗客の座席」や「貨物の位置」で【バランス】を考える必要があります。
実際は「貨物の搭載位置・重量」で、【バランス】を制限位置内に納めるのです。
機長の出発前の確認事項の【重心位置等】について
機長は出発前の確認事項により飛行機の重量について【離陸重量・着陸重量・重心位置および重量分布】に満足していることを確認しなければなりません。
飛行機の重量についての確認は航空法で定められており、定められた許容重心位置範囲(この範囲内に重心位置があれば、飛行可能)内にあることを確認するのです。
飛行機の重量・重心位置を確認する場合は、計算により算出する必要があります。
重心位置の計算
飛行機の重量・重心位置の計算は次の要領で行い、重心位置を算出します。
重量 a × ARM= MOMENT
重量 b × ARM= MOMENT
重量 c × ARM= MOMENT
・
・
・
重量合計:A × 【CG】= MOMENT合計:B
* 【CG】=MOMENT合計:B ÷ 重量合計:A
飛行機の重量については、航空機自体の重量(自重)に搭乗者・燃料に加え飛行に必要なあらゆるものの重量を計算するのです。
重量・重心位置の計算により、機長は出発前の確認事項の離陸重量・着陸重量・重心位置・重量分布について確認するのです。
旅客機は搭乗者については1人ひとりの体重を測定するのではなく、1律150lbs (68kg)又は170lbs (77kg)で計算されます。
季節により冬場は着るものが多いので冬季は170lbs (77kg)で計算され、お相撲さんが多数搭乗される場合は実測値で計算される場合もあります。
また小型機は重量計算がシビアなので、実測値を使い重量計算が行われる場合があるのです。
許容重心位置
飛行機の重量等から重心位置を計算して、許容重心位置範囲(この範囲内に重心位置があれば、飛行可能)にあることを確認する必要があります。
飛行機の重量・重心位置は、飛行機の取扱説明書の「飛行規程」に定められています。
飛行機の重心位置はだいたい翼付近にあり、その範囲も狭いのです。
飛行機の重心位置は許容重心位置のどこにあるかによって、操縦性・安定性が変化してくるのです。
重心位置による飛行機の特徴
飛行機の重心は位置により、飛行機の操縦性等に大きく影響を与えます。
重心位置により飛行機に与える影響について下記にまとめましたので、参考にして下さい。
飛行機の重量・重心位置の場所 | 特徴 |
重心位置が前方 | 重心位置が前方にあると、操縦性が悪くなり、逆に安定性は良くなります。 |
重心位置が後方 | 重心位置が後方にあると、操縦性が良くなり、逆に安定性は悪くなります。 |
重心位置が前方・重量が多い場合 | 重心位置が最前方位置で、重量が重い場合は重心位置の許容範囲外になります。 重心位置が前方付近で重量が重い場合は、ノーズギア・タイヤに荷重がかかり過ぎてしまうからです。 また離陸時や着陸時の引き起こしの力が大きく必要になり、離陸距離も増大します。 旅客機では毎回離陸時の引き起こし力が同じになるように、エレベーターのトリム値を算出してセットしています。 |
重心位置が後方・重量が多い場合 | ノーズギアタイヤにかかる荷重が少なくなりすぎると、地上滑走中のステアリングが困難になりやすいです。 |
上記のような特徴を考慮して、許容重心位置範囲(この範囲内に重心位置があれば、飛行可能)は決められているのです。
離陸重量・着陸重量・重心位置および重量分布のまとめ
飛行機の重量・重心位置等については、航空法の機長の出発前の確認事項の【離陸重量・着陸重量・重心位置および重量分布】で確認することがに決められています。
飛行機の重量制限の種類には大きく分けて8種類あり、1種類だけではありません。
飛行機が飛ぶには、8種類の制限重量の全てに満足しなければなりません。
また、飛行機が飛ぶ場合、飛行機の重量だけではなく重量分布などのバランスがとても重要になってきます。
飛行機の重量・重心位置は、飛行機の性能と深い関係性があるのです。
飛行機に搭乗した場合には空席があるからと言って、勝手に席を移動しないようにしましょう。
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